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ナショナルなもの

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 もう、だいぶ語りつくされたテーマではありますが…。最近の日本も、まさに、絵に書いたような節目的な社会状況を呈してきました…。グローバリゼーションとナショナリズムについては、いろいろな所で何度か話しているので重複してしまうのですが、繰り返し話し続けた方がいいような気がしているので、もう一度、少し書いておくことにします。

 まずは、資本主義というシステムの性格上、否応なしに繰り返されるグローバリゼーションとは、何であったのかということの再確認です。グローバル化なるものが、国境を越えて「人」「物」「お金」が動くことなのだとしたら、人類は既に何度か経験をしてきています。特に、近代資本主義の時代に入ってからは、その発展の原動力が「新市場開拓」と「イノベーション」であるいじょうは、その発展の原理から、グローバル化は避けては通れない道となっています。そうした視点から見たとき、今のところ世界は同じ歴史を繰り返していると言っていいでしょう。
 
 そしてより一層の資本主義的な発展を目論む世界、特に先進諸国は、否応なしにグローバル化を推し進めることになります。グローバル化を推し進めると、当然のように国内において、国内産業の衰退や失業等を引き起こします。所得の格差なども広がり、国民や業界団体からの反発も強まることでしょう。また、グローバル化が進めば、国境を飛び越えた市場化などが進むわけですから、市場の範囲を縛っていた国家という枠組みが邪魔になってきます。上述したことをまとめれば、グローバル化が進むと、民主主義国家内における少数派の、特に政治的な意見を無視せざるを得なくなるということ。言い換えれば、議会制民主主義を軽視する傾向が強まるということと、国家の枠組みを弱体化せざるを得なくなる、簡単に言えば、国家主権を弱めざるを得なくなるということです。

 そこで、90年代後半以降の日本の状況を具体的に見てみましょう。当然、より一層の資本主義的経済発展を目指す日本も、新自由主義的な政策をバックボーンとして、グローバル化を推し進めてきました。結果として、高度経済成長期をとうに終え曲がり角を曲がりきったところでの強力な資本主義政策の推進ですから、当然のように様々な分野において、そのひずみが顕在化していくことになります。例えば、地方における地域共同体の崩壊、すなわち、地域における自治権や自己決定権の剥奪、雇用の流動化、格差の拡大等です。強力な資本主義化が進めば進むほど、その性格上、様々な分野における社会構造上のいわば分裂がここ日本でも否応なしに進んでいます。こうした社会構造的な分裂傾向は、自殺者数の高止まりや差別社会化等、国民の精神をも分裂させつつあります。
 こうした避けることのできない状況は、政治の世界においても前述したような、議会制民主主義(近代立憲主義等)の軽視化や国家主権・国民主権の弱体化による基本的人権等の後退化などを引き起こしています。

 しかしながら、権力者側は、自分たちの持つ既得権益等を保持し続けるためには社会や国民精神の分裂化が進もうがおかまいなく、経済的発展を一層推し進めなくてはなりません。したがって、実際には分裂化の先延ばしでしかないとは思いますが、国家や国民精神の再統合のための策を講じることになります。発展による経済的利益が潤沢のときであれば、国家による所得の再分配等の施策を実行することで統合を図るところなのですが、分配するお金がない今は、お金をかけずに国家などの分裂を先延ばしするしか、方法がない状況になっているわけです。

 その方法の1つがナショナリズムなのです。本来のナショナリズムとは郷土愛のような、生まれ故郷などに対する純朴な愛情であったものが、国家再統合のためのツールの1つとして、まさに政治利用される傾向を強めているのです。政治的な意味でのナショナリズムは、強まるであろう保護主義的な傾向ともあいまって、今後に現れるであろう社会状況によっては、最終的に為政者たちが選択するかもしれない政策の正当化に利用されるというか、既にされてきました。その歴史的選択とは、戦争でリセットされることによる再市場化やイノベーションの再強化です。

 ということで、今だからこそナショナルなものに対しては、十分な注意が必要な時代だと言えるでしょう。人類は、今度こそ貨幣的な発展だけを優先するのではなく、精神的・意識的な発展をも大事にする選択をしてもらいたいものです。

〈居場所型BookCafe   
『STUDIO鎌倉第四次空間』〉

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